「もう寝るのに、脚だけまだ働いてる感じがする」
「力抜いてるつもりなのに、太ももが硬いまま」
「今日そんなに追い込んでないのに、なんでパンパンなんだろう」
トレーニングをした日の夜、ベッドに入ってからも脚が張ったままで、意識して脱力しても抜けきらない。翌朝もまだ重い。筋トレしているのに脚が変わらない、むしろ太くなった気がするという悩みの裏側に、この「抜けない感じ」が居座っていることも多いです。
結論:筋肉は「縮む」ことより「ゆるむ」ことのほうにエネルギーとミネラルを使います。力を抜くのは自動では起きない作業で、その裏側にはATPとマグネシウムがいます。ただし張りが抜けない一番の理由は栄養ではなく、その日の量と動きの順番であることのほうが多い、というのが私の見方です。
力を抜くのは、勝手に起きることではないのですか
力を入れるのがエネルギーの要る作業で、力を抜くのはスイッチを切るだけ。多くの人はそう思っていますが、実際は逆に近いです。
力を出すとき、筋線維の内側にある貯蔵庫からカルシウムが放出され、これが引き金になって収縮の仕組みが動き出します。では力を抜くときに何が起きているかというと、放出されたカルシウムを元の貯蔵庫へ汲み戻す作業です。カルシウムがそこに残っている限り、筋肉は「まだ縮んでいろ」という指示を受け取り続けます。つまり脱力とは、休むことではなく片づけることです。
カルシウムを戻すのに、なぜエネルギーが要るのですか
カルシウムは、濃い側から薄い側へ流れるのが自然な向きです。汲み戻すのはその逆なので、坂を上る仕事になります。ここで働くのがポンプで、ポンプはATPというエネルギーの通貨を使って動きます。
縮むほうにエネルギーが要るのは当然として、ゆるむほうにも同じように要る。トレーニングの量が増えれば、その片づけの総量も増えます。「今日は量をやったな」という日の夜に抜けにくさが出るのは、根性の問題ではなく、片づけの仕事量が増えているからです。
マグネシウムはこの話のどこにいますか
ATPは、それ単体では酵素に使ってもらえません。マグネシウムと結びついた形になって、はじめてポンプや酵素が扱えるようになります。体内でATPを使うほぼすべての反応の裏側にマグネシウムがいて、カルシウムを汲み戻すポンプも例外ではありません。
だから私は、マグネシウムを「筋肉をゆるめる栄養素」ではなく「ゆるめる作業の裏方」として説明しています。足りていれば張りが取れる、という話ではなく、足りていないと抜けにくさの側に不利が出る、という向きの話です。張りが強い人が全員不足しているわけでもありません。
汗をかく時期に抜けにくさが出やすいのはなぜですか
マグネシウムは汗からも失われます。運動量が多い時期や汗をかく季節は、出ていく側が増えます。トレーニングを本格的に始めた時期と暑くなる時期が重なると、入ってくる量は変わらないのに出ていく量だけが増える、ということが起こりえます。同じメニューでも、季節によって体の側の条件が違います。
食事からマグネシウムが入りにくいのは、どんな食べ方ですか
マグネシウムは、精製の過程で減りやすいミネラルです。小麦を白い粉にする、米を白くするといった工程で、外側の部分と一緒に落ちていきます。だから主食を白いものだけで組み立てて、おかずが揚げ物と肉に寄っている食べ方だと、意識しないかぎり入りにくくなります。外食が続く時期も同じです。
入っている食品は、わかめやひじきなどの海藻、納豆や豆腐といった豆類、アーモンドなどの種実類、そばや玄米、全粒粉のパンといった精製度の低い穀物です。魚介にも入っています。和食寄りの献立に自然と入ってくるものが多い。ここを食事で埋められるなら、それが一番だと私は考えています。
そのうえで、食事だけでは追いつかない時期があるのも本当のところです。私自身が飲んでいて良いと感じているのは、マグネシウムグリシン酸複合体(Prowise)(https://amzn.to/4f3PseL) のような、グリシンと結びついた形のものです。胃に来る感じが穏やかで夜に飲みやすい、という理由で選んでいます。ただしこれは私の主観で、飲めば張りが取れると言えるものではなく、効き方にも個人差があります。サプリメントは食事の代わりではありません。持病がある方、薬を飲んでいる方、腎臓の機能に指摘を受けたことがある方は、自己判断で足す前に医師か薬剤師に相談してください。
当ラボが脚の張りで、最初に見ているのはどこですか
栄養の話をしてきましたが、私が現場で最初に見るのはそこではありません。一つは、その日の量が今のその人の体に対して多すぎなかったか。もう一つは、動きの順番が偏っていなかったか。同じスクワットでも、股関節から先に動く人と膝から先に動く人では、太ももの前側にかかる時間がまるで違います。
20年以上の指導で多いのは、「量は間違っていないのに、順番の偏りで一箇所だけが働きすぎている」というケースです。本人は全身をやったつもりで、実際には毎回同じ場所が主役をやっている。栄養は土台の話であって、順番の問題を栄養で埋めることはできません。ここを取り違えると、サプリメントを足しながら同じ張りを繰り返すことになります。
ある会員のケース
30代・デスクワークの方で、ジムに行った日の夜は必ず脚が抜けないという相談でした。動きを見ると、種目は違うのにどれも膝から先に曲がる入り方になっていました。本人は全身をまんべんなくやっているつもりです。
やったことは二つで、まず量を落としました。それから、股関節から動く種目を先に置いて、前ももが主役になる種目を後ろに回しました。順番を作り直しただけで、動きの中身は変えていません。しばらくして、寝るときに脚のことを考えなくなった、と言われました。食事の側は、朝を白いパンだけで済ませていたところに納豆と海藻を足した程度です。太ももの前側が張り出す感じも落ち着いてきました。感じ方には個人差があり、同じ手順が誰にでも当てはまるわけではありません。
今日からできることは何ですか
まず、その日の量を思い出せる形で残しておくことです。何をどれだけやった日に抜けにくかったのかがわからないと、打つ手が決まりません。
入浴は、熱い湯に長く入るより、ぬるめでゆっくりのほうが夜の脱力にはつながりやすいです。睡眠は片づけが進む時間そのものなので、削らないでほしいところです。食事は、白い主食を一食だけ精製度の低いものに替える、豆と海藻を一品足す、そのくらいで続きます。
なお、頻繁に脚がつる、しびれる、片脚だけ強く腫れる、といった症状があるときは、ここまでの話とは別の原因が考えられます。その場合は医師の指示を優先してください。
よくある質問
Q. マグネシウムを飲めば、脚の張りは取れますか。
取れると言い切ることはできません。マグネシウムは汲み戻す作業の裏方なので、不足していれば不利にはなりますが、足せば張りが消えるという関係ではありません。原因が量と順番にあるなら、そちらを先に直すほうが早いです。
Q. ストレッチで伸ばせば抜けますか。
気持ちの上では楽になりますが、伸ばすことと細胞の中でカルシウムが片づくことは別の話です。翌日また同じ場所が張るなら、伸ばし方ではなくその日の動きの順番を疑ってください。
Q. 張ったまま次のトレーニングをしてもいいですか。
同じ場所をまた主役にするなら、私はすすめません。前回働きすぎた場所を休ませて別の場所を主役にするほうが、結果として脚は変わります。痛みがある場合は、続ける前に医師に診てもらってください。
体験について
脚が抜けない夜が続いているなら、その原因が量なのか、順番なのか、食事なのかを、一度切り分けてみるのが早いです。何が起きているかを一緒に見ます。
初回60分のカウンセリングと体験の料金は5,500円です(7日以内のご入会で初月会費から差し引き)。
【執筆者】今村 雅史(銀座トレーニングラボ代表・パーソナルトレーナー歴20年以上)
進化学・神経科学に基づいたトレーニング指導を専門とする。NASM OPTIMA 2025・2026年度講師。


