「脚の形は骨格だから、生まれつきでもう決まってるんですよね」
「親もO脚だったので、私も遺伝であきらめてます」
「骨って変わらないですよね?だったらトレーニングしても無駄なんじゃないですか」
こういう相談は本当によく受けるんですよ。しかも大体、諦め気味に聞かれます。
結論:骨そのものの長さや太さは、大人になってからは変わりません。ですが脚の見た目を作っているのは骨単体ではなく、骨盤・大腿骨・脛骨がどの向きで並んでいるか、そこに筋肉がどう乗っているかです。骨格のせいで片付けている部分の多くは、関節の向きと筋の使われ方でまだ動く余地があります。個人差はあるので、全員に同じだけ変化が出るわけではないんですけどね。
「脚の形は骨格で決まっている」って本当ですか?
半分は本当で、半分は違うというのが正直なところです。骨の長さ、骨盤の横幅、これは骨そのものの話なので、大人になってからトレーニングでどうこうできるものではありません。ここは正直にお伝えしています。
ただ、脚を横や前から見たときの「形」って、骨の長さだけで決まっているわけじゃないんですよ。骨盤に対して大腿骨がどの角度で入っているか、大腿骨に対して脛骨がどの向きでついているか、足首から下のアーチがどれくらい保たれているか。この「並び」の部分は、骨そのものとは別に動く余地があります。O脚っぽく見える、外側だけ張って見える、というのは骨の長さの問題というより、この並びと筋の張りの問題であることが結構多いんです。
なぜ脚は外側や前側に張りやすいんですか?
これは進化の視点で見るとわかりやすいです。人間の脚は、木の上で枝をつかむための構造から、地面に立って長時間歩き続けるための構造に変わってきました。二足で立つには、股関節をわずかに内側に締めて骨盤を安定させる筋と、着地のたびに衝撃を受け止める外側の筋、この両方が常時働いている必要があります。
現代の生活だと、椅子に座る時間が長くて股関節を深く曲げた姿勢が続きますし、歩く量そのものも減っています。すると内側で骨盤を締める筋がうまく働かなくなって、代わりに外側の筋と、太もも前面の筋が優位に働くようになるんです。神経は「今使われている経路」を強化する性質があるので、外側に頼るクセがついた状態がそのまま定着してしまう。これが、いわゆる「脚の外側が張って見える」状態の正体であることが多いです。
骨の長さと、骨の「向き」は別の話なんですよ
骨格というと骨の形そのものを想像しがちなんですが、トレーナーとして見ているのはむしろ「向き」のほうです。大腿骨は骨盤の受け皿(寛骨臼)に対してある程度の角度で回転して入っていて、その回転具合(前捻角と呼ばれます)には個人差があります。この角度自体は生まれつきの要素が強いんですが、その角度をさらに強めてしまうか、筋の使い方で中間に近づけられるかは、日々の姿勢と運動習慣で変わってきます。
つまり「骨格」と一言で言っても、変えられない部分(骨の長さ・形そのもの)と、動く余地がある部分(骨にかかる回旋の強さ、関節の位置関係)が混ざった状態で語られていることが多いんです。ここを分けて考えないと、変えられる部分まで諦めることになってしまいます。
当ラボが脚を見るとき、まず何を確認しているか
初回のカウンセリングでは、まず立った状態と歩いている状態、両方を見ます。膝のお皿がどちらを向いているか、足の指はどこに体重が乗っているか、しゃがんだときに膝が内側に入るか外側に流れるか。これだけでも、外側の筋に頼っているのか、前側の筋に頼っているのか、大体の傾向がつかめます。
筋トレをしても脚が変わらないと感じている方へでも触れているんですが、脚のトレーニングをしても変化が出ない方の多くは、種目自体は悪くなくて、その種目の中で結局いつもの張りやすい筋ばかり使ってしまっているケースなんですよ。だからうちでは、種目を増やす前に、まず「今どの筋が主役になっているか」を見ることを優先しています。
骨盤・大腿骨・脛骨の「回旋」って何を見ればいいんですか?
専門的に言うと大げさに聞こえるかもしれませんが、見ているポイントは単純です。立った状態で膝のお皿が正面を向いているか、内側や外側にねじれていないか。しゃがむ動作の途中で、膝の向きが変わってしまわないか。この2つを確認するだけで、大腿骨と脛骨の回旋のクセはかなり見えてきます。
骨盤側は、股関節を曲げたときに骨盤ごと一緒に倒れてしまうか、骨盤は保ったまま股関節だけが動くかを見ます。骨盤が一緒に動いてしまう方は、股関節まわりの深層の筋がうまく働いていないサインで、これが外側の筋への依存につながっていることが多いです。
足のアーチが崩れていると脚の形にどう響くんですか?
足の裏のアーチは、地面からの衝撃を受け止めるクッションであると同時に、脚全体の回旋の起点でもあります。アーチが潰れて内側に倒れ込む(いわゆる回内)と、そこから連動して脛骨、大腿骨まで内側にねじれる方向の力が伝わりやすくなります。逆に足の外側だけで体重を受けるクセがあると、今度は外側に張る方向の力が積み重なっていきます。
足元から見るのは地味に思われがちなんですが、脚全体の見た目に一番効いてくるのは実はここだったりするんです。20年以上指導していて多いのは、膝や太ももだけ気にしてトレーニングされている方が、足元のクセをそのままにしていて変化が頭打ちになっているケースですね。
実際にどんなことをやっているか
評価で見えたクセに合わせて、まず働きにくくなっている筋を目覚めさせるところから始めます。骨盤を内側から締める深層の筋、足のアーチを保つ足裏の小さな筋、こういう地味な筋から先にアプローチすることが多いです。ここを飛ばしていきなり大きな種目をやると、結局いつもの張りやすい筋が主役になってしまって、狙った変化が出にくいんですよ。
土台が働くようになってきたら、片脚での動作を増やしていきます。両脚でのスクワットは左右のごまかしが効いてしまうので、片脚の状態で骨盤と膝の向きを保てるかを、負荷を上げながら確認していく流れです。
ある会員さんに起きた変化
以前、立ち仕事で長時間の方が来られたんですが、最初のチェックで片脚立ちをしてもらったら、骨盤が大きく傾いて外側の筋だけでバランスを取っているのがすぐにわかりました。本人は「脚の形は昔からこうだから」と話していたんですが、股関節まわりの筋にアプローチして数ヶ月続けたところ、片脚立ちのときの骨盤の傾きが目に見えて小さくなって、ご本人も「立っているときの脚の力の入り方が変わった」と話してくれました。数値で測ったわけではないんですが、写真で見比べても外側の張り方が落ち着いた印象があります。もちろん骨格そのものが変わったわけではなく、使い方が変わったということなんですけどね。
日常でできることはありますか?
トレーニングの時間以外でも、座り方や立ち方のクセは効いてきます。椅子に座るとき脚を組む方向がいつも同じだったり、立っているとき片脚に体重をかけるクセがあったりすると、それだけで左右差が積み重なっていきます。まずは自分がどちら側に体重をかけがちか、意識して観察してみるだけでも違いますよ。
あとは歩くときに足の外側だけで蹴り出していないか、階段を上るときに膝が内側に入っていないか。この2つは鏡の前や動画で見返すとわかりやすいので、気になる方は一度自分の歩き方を撮ってみるのもおすすめです。
よくある質問
Q. 骨格が原因の脚の形は、トレーニングで変えられますか?
骨そのものの長さや形は変わりませんが、脚の見た目に関わる骨の並び方や、そこに乗る筋の張り方は変わる余地があります。個人差があるので、変化の出方や期間は人によって違います。
Q. O脚は生まれつきだから仕方ないんですか?
骨盤の角度など生まれつきの要素はありますが、O脚に見える原因の多くは股関節まわりの筋のクセが重なった結果です。評価をしてみないと、骨格由来かクセ由来かの切り分けはできません。
Q. 自分でできるセルフチェックはありますか?
片脚立ちをしたときに骨盤が大きく傾くか、しゃがんだときに膝の向きが変わるか、この2つは自分でも確認しやすいポイントです。気になる場合は一度専門家に見てもらうのが確実です。
【執筆者】今村 雅史(銀座トレーニングラボ代表・パーソナルトレーナー歴20年以上)
進化学・神経科学に基づいたトレーニング指導を専門とする。NASM OPTIMA 2025・2026年度講師。


