「脚やせのつもりでスクワットを続けたら、前ももだけ張ってきました」
「毎日やっているのに、サイズは1センチも減っていません」
「脚やせに効くと書いてあった種目を全部やっています」
3つ目が、実は一番危ない状態です。効くと書かれた種目を集めても、その人に効く保証はどこにもないからです。
結論:脚やせの筋トレが逆効果になるのは、種目が悪いときではなく、狙った筋肉ではない場所が代わりに働いているときです。同じ種目でも、股関節から動く人はお尻が、膝から動く人は前ももが働きます。後者が続くと、細くしたい場所を毎回鍛えることになります。まず、どこが働いているかを確かめてから回数を決めてください。
「効く種目」を集めても細くならないのはなぜ?
種目名は、働く場所を保証しません。
ヒップリフトはお尻の種目とされていますが、お尻が眠っている人がやると、裏ももと腰で持ち上げます。終わったあとに腰が張っているなら、それはお尻の種目になっていません。スクワットも同じで、股関節が固い人がやると、足りない分を膝と腰が肩代わりします。
つまり「何をやるか」より「その人の体でどこが動くか」が先です。ここを飛ばして種目だけを増やすと、代償している場所ばかりが強くなります。細くしたい前ももが、一番よく働いて一番強くなる。これが逆効果の正体です。
体は、なぜサボる場所とがんばる場所を作るのですか?
脳は、動きを部品ごとに管理していません。「立ち上がる」「歩く」という結果の単位で覚えています。結果さえ達成できれば、どの筋肉を使うかは問いません。
一度使いやすい経路ができると、脳はその経路を優先します。省エネだからです。長時間座っていてお尻の感覚が鈍っている人は、お尻を呼び出す経路が細くなっている。そこで立ち上がろうとすると、脳は太いほうの経路、つまり前ももと腰を選びます。本人に自覚はありません。無意識に、毎回同じ場所に仕事が集まります。
この状態で回数を増やすのは、片方の道路にだけ車を流し続けるようなものです。渋滞している道路が広がり、使われない道路はさらに細くなります。
逆効果になっているサインはありますか?
いくつか、はっきりした目安があります。
トレーニング翌日に、狙った場所ではないところが張っている。お尻の種目をしたのに腰が痛い、裏ももを狙ったのに前ももが張る、という形です。それから、フォームが崩れる回数が毎回同じところで来る。10回目で必ず膝が内に入るなら、8回目以降は別の筋肉が代わりに動いています。
もうひとつは、サイズが減らないのに硬さだけ増えている場合です。触ると硬いのに周径が変わらないなら、張りが乗っているだけで中身は変わっていません。
20年以上の指導で多いのは、ここで「まだ足りない」と判断して量を足す方です。真面目な方ほどこの選択をします。ただ、代償が起きている状態で量を足すと、代償の量が増えるだけです。
有酸素運動を足せば解決しますか?
解決するとは限りません。歩く・走るも、フォームの癖がそのまま反映される動作だからです。
前ももで着地する癖のある人が毎日1時間歩けば、前ももを毎日1時間鍛えたことになります。脂肪は多少減っても、張りは増える。だから「歩いているのに脚が細くならない」という相談が起きます。有酸素運動そのものが悪いのではなく、悪い形で長時間繰り返すのが問題です。
順番としては、動き方を整えてから量を増やすほうが確実です。形が変わっていない段階で距離を伸ばすと、痛みが出ることもあります。
当ラボが最初の数回でやること
重さも回数も決めずに、動きを見るところから始めます。
見るのは3つです。片脚立ちで骨盤が水平に保てるか。しゃがんだときに膝がつま先の方向を向いているか。前屈したときに、腰が丸まるより先に股関節が折れているか。この3つのどれが崩れているかで、どこがサボっているかが決まります。
そのあと、サボっている場所を先に起こします。ここは軽い動作で構いません。というより、重くすると代償が戻ってくるので軽くする必要があります。この段階は地味で、「これでいいんですか」と言われることが多いのですが、ここを飛ばした方は数か月後にまた同じ相談で戻ってこられます。
ある会員のケース
30代の方で、脚やせのために自宅でスクワットを毎日50回、半年続けていた方がいました。体重は変わらず、前ももだけが硬くなったと言って来られました。
動きを見ると、しゃがむときに膝から先に前へ出て、上体がほとんど倒れていませんでした。股関節が使われていない形です。これでは前ももしか働きません。半年間、前ももを毎日50回鍛えていたことになります。
やったことは、スクワットを一度やめてもらったことと、股関節から折る動きと、お尻に感覚を戻す動きを週2回入れたことです。数か月経ってから、フォームを直したスクワットに戻しました。前ももの張りが引いて、そのぶん膝の上のラインが変わりました。周径の減り方は緩やかでしたが、写真で見ると印象がはっきり違いました。効果には個人差があります。
毎日やってはいけないのですか?
毎日やること自体が問題ではありません。毎日やるなら、負荷ではなく質を選ぶ、というだけです。
筋肉は、負荷をかけた後に回復する過程で変わります。回復が終わる前に次を入れると、疲労だけが積み上がります。疲労が積み上がった状態では、狙った筋肉から先に力が出なくなり、代償が起きやすくなる。毎日やる人ほど代償に落ちやすいのは、この順番です。
軽い動きや感覚を戻す動作は毎日でも構いません。強い負荷は週2〜3回で十分です。
日常でできることはありますか
信号待ちで片脚に体重を預ける癖がある方は、そこを止めるだけでも変わります。いつも同じ側に乗せていると、骨盤の高さが左右で固定され、片方の脚だけに負担が集まります。両足に均等に乗る、それだけです。
もうひとつ、階段を上るときに手すりを引かずに、お尻で押し上げる感覚を試してみてください。一日に何度もある動作なので、ここが変わると、わざわざ運動時間を作らなくても練習量が確保できます。
脚が変わらない原因の切り分けについては、筋トレをしても脚が変わらない方向けのページに詳しく書いています。
よくある質問
Q. 効いている感覚がないと意味がないですか?
感覚は目安のひとつですが、絶対ではありません。眠っている筋肉は、働き始めても感覚が薄いことがあります。むしろ、狙っていない場所に強い感覚が出ているほうが問題です。
Q. フォームが合っているか自分で確かめられますか?
横から動画を撮るのが一番早いです。しゃがむときに上体と脛が平行に近い角度で動いていれば、股関節が使えています。上体が立ったまま膝だけ曲がっているなら、前ももに寄っています。
Q. 一度太くなった脚は元に戻りますか?
張りで太くなっている部分は、使い方を変えれば戻ります。時間はかかりますが、変化する方です。何が原因で太く見えているかによって期間は変わります。
【執筆者】今村 雅史(銀座トレーニングラボ代表・パーソナルトレーナー歴20年以上)
進化学・神経科学に基づいたトレーニング指導を専門とする。NASM OPTIMA 2025・2026年度講師。


