「引き締めたいだけなのに、筋肉がついて太くなるのが怖いんです」
「昔バレーをやっていて脚が太くなったので、また同じことになりそうで」
「上半身ばかりガッチリしてしまって、バランスが悪くなりました」
この不安は本当によく聞きます。そして、多くの場合は心配の向きが少しずれています。
結論:普通のトレーニングと普通の食事で、意図せずムキムキになることはほぼありません。ただし「太く見える」状態にはなり得ます。原因は筋肉が増えたことではなく、特定の場所を使いすぎて張りが慢性化することです。増えたのか、張っているのか。この二つを分けると、やるべきことが逆になるんですよ。
筋肉が実際に太くなるには何が要るか
筋肉が太くなるには、十分な負荷、十分な栄養、そして時間の3つが揃う必要があります。どれかが欠けていれば、太くなる方向には進みません。
週2回のトレーニングと通常の食事量で、本人の意図に反してムキムキになった方を、24年の指導で私は見たことがありません。むしろ、太くなることを目指している方でも、そこまで持っていくのは簡単ではないんです。
では「太くなった」という体験は何だったのか
多くは、張りです。使いすぎた筋肉は、常に軽く力が入った状態になります。触ると硬く、見た目には膨らんで見える。これは筋肉が増えた状態とは別ものです。
バレーや陸上で脚が太くなったという方の場合、練習量に加えて、その競技で使う動きの偏りが関係していることが多いです。前ももやふくらはぎに負担が集中する動きを、毎日何年も繰り返した結果、その場所が張った状態で固定された。増えた分もありますが、見た目の大部分は張りのほうです。
上半身だけガッチリしてしまう理由
上半身が先に変わる方には、共通点があります。下半身の種目でも、実際には背中や腕で引いて動作を成立させていることが多いのです。
たとえば、股関節から折る動きが苦手な方がデッドリフト系の種目をやると、脚とお尻ではなく背中と腕が主役になります。回数を重ねるほど、働いた場所だけが変わっていく。バランスが崩れたのではなく、最初から一部しか使っていなかったんですね。
「軽くする」では解決しない
太くなるのが怖いからと負荷を下げる方が多いのですが、これはあまり効きません。負荷を下げても、使う場所が同じなら、張りやすい場所が張り続けます。
必要なのは軽くすることではなく、使う場所を変えることです。前ももで支えている人はお尻で支えられるように、背中で引いている人は脚で押せるように。同じ種目でも、どこが働くかが変われば、変わる場所も変わります。
銀座トレーニングラボでの見方
当ラボでは、太くなるのが不安という相談を受けたとき、まず「いま太く見えているのは何由来か」を分けます。むくみか、脂肪か、張りか、実際の筋量か。触ったときの質感、朝夕の差、動作の癖から判断します。
そのうえで、張りが主なら使い方の書き換えから入ります。筋量が主なら、負荷の種類と量を調整します。原因が違うものに同じ処方を出すと、片方にしか当たらないためです。
日常でできること
一つ、階段を上るときに「前ももで押す」のではなく「お尻で床を押す」意識を持ってみてください。同じ階段でも、働く場所が変わります。
もう一つ、張りが気になる場所を触ってみて、力を抜いた状態でも硬いかどうかを確かめてください。抜いても硬いなら、増えたのではなく張っている可能性が高いです。焦らず、比べる相手は数週間前の自分にしてください。
よくある質問
Q. 重いものを持たなければ太くなりませんか?
重さより、どこを使っているかのほうが効きます。軽くても同じ場所を使い続ければ、張りは残ります。
Q. 有酸素運動だけにすれば安全ですか?
太くなる心配は減りますが、体型の変化としては別の刺激が必要です。目的によって使い分けてください。
Q. 一度太くなった脚は戻りますか?
張りの部分は変わる余地があります。筋量や骨格による部分は変わる幅が小さいです。個人差が大きいので、内訳を確認してから判断するのが確実です。
【執筆者】今村 雅史(銀座トレーニングラボ代表・パーソナルトレーナー歴24年)
進化学・神経科学に基づいたトレーニング指導を専門とする。NASM OPTIMA 2025・2026年度講師。


