「一軒目も二軒目も通ったのに、脚だけ同じままなんです」
「次のジムに行ってみようとは思うんですが、入った瞬間に契約の話をされそうで、結局ビルの前で引き返しました」
「トレーナーさんは親切でしたし、サボったわけでもないのに、何が足りなかったのか分からないままです」
こういう話を体験の最初の十分くらいでよく聞きます。みなさん、自分の努力が足りなかったという言い方をされますが、聞いていくと努力の量の問題ではないことのほうが多いです。
結論:ジムを変えても脚が変わらないのは、変えたのが場所と人だけで、何を見て種目を決めているかが前と変わっていないからです。評価をしないまま種目が決まれば、店が変わっても同じメニューが出てきます。同じ種目をやっても体の使い方が前のままなら、働く筋肉も見え方も前と同じところに戻ります。
ジムを変えたのに、なぜ脚だけ変わらないんですか?
ジムを乗り換えるとき、比べているのは立地と料金と雰囲気と、担当してくれる人の感じの良さです。ただ、脚の形が変わるかどうかを決めているのは、その一時間のあいだに体のどこがどう動いたか、そこだけです。場所と人が新しくなっても、出てくる種目とその中での体の運び方が前と同じなら、体からすれば引っ越しただけです。
評価をしないまま種目が決まると、何が起きますか?
問診票を書いて、目標を聞かれて、その場でメニューが始まる。珍しい流れではありません。問題は、そのメニューがあなたの体を見た結果ではなく、脚を細くしたい人向けの標準の組み立てから出てきている場合です。見ていないものは、直しようがありません。足首がどこまで曲がるのか、片脚で立ったときに骨盤が落ちるのか、しゃがんだときに膝がどちらに流れるのか。ここを確かめずに種目名だけが決まると、一番効率の悪い動かし方のまま、回数だけが積み上がります。
脚の悩みで行ったのに、なぜ全身のメニューが出てくるんですか?
全身を動かすこと自体は悪くありません。ただ、脚で悩んで来た人に一般的な一周分のメニューがそのまま出てくるとしたら、それは順番の問題です。その人の脚が今の形になっている理由を先に特定して、そこに必要なものを足すのが本来の順番だからです。理由を特定する工程を飛ばすと、残るのは全身をまんべんなくという無難な組み立てで、誰に出しても間違いにならないぶん、特定の悩みには届きにくいです。
同じスクワットでも、人によって結果が違うのはなぜですか?
スクワットという名前は一つでも、中身は人によって別の運動になります。股関節から先に沈む人と、膝から前に出る人では、力を出している筋肉が違います。足裏のどこで床を押しているかでも変わります。
そして、この運び方は毎回考えて選んでいるわけではありません。何百回と繰り返すうちに、脳と神経の側に、この動きはこう運ぶという段取りができあがっています。だから新しいジムでスクワットを指示された瞬間、体は前のジムで覚えた段取りをそのまま再生します。重さを増やしても回数を倍にしても、段取りが前のままなら使われる筋肉は同じで、張り方も太さの出方も前と同じところに落ち着きます。脚が変わらなかったのは、努力が足りなかったからではなく、同じ段取りを別の場所で繰り返していたからです。
当ラボでは、最初に何を見ていますか?
私たちは、フォームは結果であって原因ではない、という見方をしています。しゃがんだときに膝が内に入るのは、膝が悪いからではなく、その手前の足首や股関節の制限から体が選んだ逃げ道であることが多いからです。だから最初に見るのは種目の出来ではなく、関節がどこまで動いて、どこを他の場所で埋めているかというズレです。
立ち方、歩き方、片脚で立ったとき、しゃがむ途中を見ると、その人が普段どの段取りで脚を使っているかがだいたい見えます。そのうえで、足りない動きを先に取り戻してから種目を決めます。
20年以上の指導で多いのは、前のジムで何をやってきたかを聞いたときに、種目の名前はすらすら出てくるのに、自分の足首や股関節がどこまで動くのかは一度も聞いたことがない、という状態です。メニューの記録は残っているのに、その人の体がどうなっていたかの記録が残っていません。それと、うまくできない種目ではなく、うまくできてしまう種目をずっと続けている方が多いです。得意な動かし方でこなせるので、苦手なところは最後まで使われないままになります。
なお、この記事では他のジムの料金やコース内容の数字は出しません。自分で確認していないことを書くつもりはないからです。
見学や体験に行ったら、自分で何を確かめればいいですか?
どこのジムに行くときでも使える見方が三つあります。一つ目は、種目が始まる前に体を見る時間があったかどうかです。大事なのは、見た結果を説明してもらえたかどうかです。ここが硬いのでこの種目を先にやります、と理由がつながっていれば、その人はあなたの体を見て決めています。
二つ目は、なぜこの種目なんですかと二回聞いてみることです。評価から出てきた答えなら言い方が変わっても筋は同じで、一般論だと二回目で別の説明に移りがちです。三つ目は、あなたの脚の悩みがその日のメニューのどこに反映されているかを説明してもらえるかどうかです。
勧誘が怖くて足が止まるという話もよく聞きます。その場で決めないと伝えていいですし、決めないまま帰って問題ありません。
ある会員のケースでは、何が変わったんですか?
三軒目として来られた方がいます。真面目に通っていて、スクワットもランジもきちんとこなせる方でした。ただ、片脚で立つと骨盤が落ちて、しゃがむと膝が内に入り、足首はあまり曲がっていませんでした。苦手な部分を他の場所で埋めながら、同じ段取りでこなしてきた状態です。
やったのは、種目を増やすことではなく減らすことでした。足首と股関節が動く範囲を先に取り戻して、その範囲の中だけで床を押す練習をやり直しました。しばらく続けたところで、しゃがんだときに前ももが張らなくなった、という言葉が本人から出てきました。ただ、変化の出方には個人差があります。
日常のほうで気をつけられることはありますか?
ジムにいる時間は一週間のうちのわずかで、残りの時間の段取りのほうが回数は多いです。椅子から立ち上がるとき、つま先重心で前に飛び出すように立っていないか。階段を上るとき、後ろの脚で押しているか。一日に何回か思い出すだけでも、段取りに触る回数はジムより多くなります。
ただ、完璧にやろうとしなくて大丈夫です。一日中キープするのは無理ですし、緊張したまま歩くほうが体には良くありません。信号待ちのあいだだけ、くらいで十分です。
よくある質問
Q. ジムを変えれば、脚の形も変わりますか。
A. 場所を変えただけでは変わりにくいです。変わるかどうかを決めているのは、あなたの体の使い方と、その使い方を決めている評価の有無です。次に選ぶときは、体を見てから種目を決めているかを確かめてもらうといいと思います。
Q. 同じ種目をずっと続けているのに効かないのは、負荷が足りないからですか。
A. 負荷が原因のこともありますが、それより先に、動きの段取りを疑ったほうがいいことが多いです。苦手な部分を他の場所で埋めながらこなしていると、重さを増やしても埋めているほうが強くなります。
Q. 体験に行って、その場で契約しなくても大丈夫ですか。
A. 大丈夫です。比べるための材料を持ち帰ってもらうのが体験だと思っています。当日に決めないと損をする、という考え方で運営していません。
体験について
自分の脚がなぜ今の形なのかを、一度外から見てもらう機会にしてもらえたらと思います。その場で契約をお願いすることはないので、確かめに来るだけで構いません。
初回60分のカウンセリングと体験の料金は5,500円です(7日以内のご入会で初月会費から差し引き)。
【執筆者】今村 雅史(銀座トレーニングラボ代表・パーソナルトレーナー歴20年以上)
進化学・神経科学に基づいたトレーニング指導を専門とする。NASM OPTIMA 2025・2026年度講師。


