「毎晩ちゃんとやってるのに、脚だけ何も変わらないんです」
「むしろ前より太くなった気がします」
「動画のとおりにやってるつもりなんですけど、種目が合ってないんでしょうか」
こういう相談は本当によくいただきます。しかもサボっている人ではなく、続けられている人ほどこの言い方になります。
結論:自宅で脚が変わらないのは、種目の選び方が悪いからではなく、その種目で狙っているはずの筋肉に負荷が届いていないからであることがほとんどです。脳は一番慣れた使い方を優先するので、同じ動きを繰り返すほど、もともと得意な筋肉ばかりが働きます。狙いが外れたまま回数だけ増やすと、使い慣れた場所の張りが増えて「太くなった」と感じることもあります。
同じ種目をやっても、人によって効く場所が違うのはなぜですか?
スクワットひとつ取っても、お尻が疲れる人、前ももがパンパンになる人、ふくらはぎが張る人に分かれます。見た目のフォームはそれほど変わらないのに、体の中では別々のことが起きています。
同じ「しゃがむ」でも、股関節を主に使うやり方と、膝を主に使うやり方と、足首でごまかすやり方があって、どれを選んでも見た目はしゃがめてしまいます。だから「正しい種目をやったかどうか」と「狙った筋肉が働いたかどうか」は別の話になります。
脳はどうして、いつも同じ筋肉を選ぶんですか?
体は毎回ゼロから動きを組み立ててはいません。過去にうまくいったやり方を覚えていて、似た場面ではそれを引っ張り出します。この方が速くて、失敗しにくくて、エネルギーも食わない。命がけで動いていた時代なら、その場で考え直すより前の型をすぐ再生するほうが安全でした。そのつくりが今の私たちにも残っています。
つまり脳は、一番効率のいい動きではなく一番慣れている動きを選びます。前ももを使うクセのある人がスクワットをすれば、やはり前ももで解決する。お尻を使ってほしくても、体はわざわざ不慣れな方を選びません。これが代償動作で、弱い場所をかばって得意な場所が肩代わりしている状態です。
繰り返すほど、そのクセは強くなってしまいますか?
残念ながら、その方向に進みやすくなります。同じ動きを何十回、何百回と繰り返すと、そのとき使った筋肉の組み合わせが「使いやすい道」として太くなっていきます。練習した分だけ上手にはなるのですが、上手になっているのが狙った筋肉の使い方ではなく、肩代わりのやり方のほうだったりします。毎日続けているのに脚のかたちが変わらない人は、怠けているどころか、間違った組み合わせを一生懸命に練習してしまっている。熱心な人ほどハマるのはこのためです。
体重だけの負荷は、どこで止まりますか?
もうひとつ、家でのトレーニングには天井があります。負荷が自分の体重しかない、という点です。筋肉は今のその人にとって少しきつい刺激が入ったときに変わるので、最初の数週間は体重だけでも変化が出ます。ところが体が慣れると、同じ動きは同じ負荷のままなので物足りなくなる。しかも脚は日常でいちばん体重を支えている部位で、もともと体重には慣れきっているぶん、上半身より早く頭打ちが来ます。
回数を増やすと、なぜ張りだけが増えるんですか?
負荷が上げられないと、ほとんどの人が回数か時間を増やす方向に逃げます。20回を40回に、3分を10分に。気持ちとしては当然なのですが、ここで増えるのは、さっきの得意な筋肉の仕事量です。狙いが外れたまま量だけ増えるので、前ももや外もも、ふくらはぎといった使い慣れた場所にばかり疲労がたまる。そこが張って、むくんで、パンパンのまま翌日を迎える。鏡で見て太くなったと感じるのは、多くの場合この状態です。細くしたくて量を増やしたのに、太く見えるほうへ進んでしまう。この順番で行き詰まっている方が本当に多いです。
当ラボでは、最初に何を見ていますか?
私たちは種目を増やすところからは始めません。まず、股関節や足首がどこまで動くのか、しゃがむときにどの関節から動き出すのかを見ます。動かない関節がある人に「お尻を使って」と声をかけても、使えないから肩代わりしていたのであって、意識だけでは変わらないからです。
20年以上の指導で多いのは、脚やせのために毎日スクワットをしていた方が、実は股関節ではなく膝と足首だけでしゃがんでいた、というケースです。この場合、種目を変えるより先に、股関節が動く範囲を取り戻して、そこから動き出す順番を体に覚え直してもらったほうが早い。何をやるかより、どこから動くかのほうが先に来ます。もちろん出方には個人差があり、痛みがある場合は医師の指示が優先です。
自分で当たっているかを確かめる方法はありますか?
道具がなくてもできる確認が二つあります。
ひとつは、動かしている最中に触ることです。しゃがみきったところで一度止まって、お尻に手を当ててみてください。狙いどおりならそこが硬く張っているはずで、ふにゃっとしているならその回はお尻の仕事になっていません。前ももだけがカチカチなら、そこが肩代わりしています。触ればその場で分かるので、鏡より確実です。
もうひとつは、翌日どこに疲れが残ったかを見ることです。狙った場所と違うところばかりが張っているなら、種目は合っていても体の中での配分が違っている可能性が高い。この二つで、当たっていないかもしれないという見当はかなりつきます。
ある会員のケース
自宅で脚のトレーニングを長く続けてきた方がいらっしゃいました。回数もこなしていて、決してサボっていない。それでも脚の形は変わらず、前ももの張りだけが強くなっていく状態でした。
見せていただくと、しゃがむ動作が膝から始まっていて、股関節はほとんど使われていませんでした。そこで種目の数は減らし、股関節が動く範囲を広げる時間と、その範囲を実際の動きで使う時間に振り替えました。しばらくして本人が最初に言ったのは、見た目の話ではなく「同じことをやっているのにお尻のほうが疲れるようになった」でした。効く場所が移ったわけです。そこから先は張り方も見え方も変わっていきましたが、変化の出方は人によって違います。
家でやるなら、何を変えればいいですか?
自宅でやること自体は悪くありません。通わなくても続けられるのは強みです。変えたほうがいいのは、やる場所ではなく確かめ方のほうです。回数を増やす前に、1回ずつ下で止まって狙った場所が張っているかを触って確かめる。張っていなければ、その回数はいくら積んでも同じ場所には届きません。それでも同じ場所ばかりが張るなら、意識では届かない範囲の問題なので、外から見てもらったほうが早いです。
よくある質問
質問:自宅トレーニングは意味がないということですか。
いいえ、違います。続けられる場所でやれるのは強みです。ただ、負荷が体重だけだと途中で頭打ちになりますし、狙った筋肉に当たっているかを自分では見づらい。この二点を補えば家でも成立します。
質問:脚が太くなった気がするのは、筋肉がついたからですか。
多くの場合、筋肉が大きくなったのではなく、使い慣れた場所に疲労とむくみがたまって張っている状態です。短期間で脚のかたちが変わるほど筋肉が増えることはあまりありません。効かせる場所が変わると、この張り方も変わってきます。
質問:どのくらい続ければ変化が分かりますか。
期間ではなく、狙った筋肉に当たっているかどうかで変わります。当たっていないまま続けても、同じ場所が張るだけです。逆に効く場所が移ると、見た目より先に本人の感覚が変わることが多いです。感じ方にも個人差があります。
体験について
脚が変わらない理由は人によって違います。今の動き方を一度外から見てもらうと、自分の場合はどこで肩代わりが起きているのか、見当がつきます。
初回60分のカウンセリングと体験の料金は5,500円です(7日以内のご入会で初月会費から差し引き)。
【執筆者】今村 雅史(銀座トレーニングラボ代表・パーソナルトレーナー歴20年以上)
進化学・神経科学に基づいたトレーニング指導を専門とする。NASM OPTIMA 2025・2026年度講師。


