「食事を減らしてから、味が薄く感じるんです」
「濃い味じゃないと物足りなくて、結局しょっぱいものを足してしまう」
「肌もカサついてきたので、栄養が足りていないんだろうなとは思っています」
食事量を落としている方から、この相談を受けることがあります。気のせいではなくて、身体の側にちゃんと理由があるんですよ。
結論:味を感じる細胞は入れ替わりが非常に速く、その入れ替わりに亜鉛が使われます。食事量を落とすと亜鉛の摂取も一緒に落ちやすく、その結果として味を感じにくくなることがあります。肌の乾燥が同時に出るのも、同じ理由からです。
味を感じているのは、10日ほどで入れ替わる細胞です
舌の表面には味蕾(みらい)という器官があって、そこにある細胞が味の情報を受け取っています。この細胞の寿命は、およそ10日前後と言われています。身体の中でもかなり速い部類です。
つまり味覚は「一度できあがったら終わり」ではなく、常に作り直され続けている機能なんですよ。作り直しが滞れば、感度は落ちます。
なぜ亜鉛が関わるのか
細胞を新しく作るには、DNAを複製して、たんぱく質を合成する必要があります。この工程に関わる酵素の多くが、亜鉛を部品として使っています。亜鉛が不足すると、これらの酵素が働きにくくなり、入れ替わりの速い組織から順に影響が出ます。
味蕾はその代表格です。同じ理由で、皮膚や粘膜、髪、爪といった入れ替わりの速い場所にも影響が出ます。味が薄く感じるのと肌が荒れるのが同時に起きるのは、偶然ではなく同じ工程が滞っているからなんですね。
食事を減らすと、なぜ亜鉛が真っ先に減るのか
亜鉛が多く含まれているのは、牡蠣、赤身の肉、レバー、卵、チーズ、ナッツといった食品です。見ていただくと分かるとおり、ダイエット中に「重い」「カロリーが高い」という理由で最初に減らされがちなものが並んでいます。
代わりに増えるのは、野菜、サラダチキン、豆腐、こんにゃくといったものです。これらが悪いわけではないんですが、亜鉛の供給源としては弱い。カロリーだけを見て入れ替えると、亜鉛が静かに減っていきます。
「濃い味じゃないと物足りない」が最初のサイン
味を感じにくくなると、人は無意識に味を濃くします。塩を足す、ソースをかける、辛いものを選ぶ。ここで塩分が増えると、今度は水分が溜まりやすくなって、脚のむくみとして出てくることがあります。
20年以上の指導で多いのは、食事を減らしているのに脚がむくむようになった、という相談です。話を聞くと、味付けが濃くなっていることに本人が気づいていないことが少なくありません。減らしたことよりも、減らし方のほうに原因があるわけです。
亜鉛は吸収されにくい栄養素でもあります
亜鉛は、食べた量がそのまま身体に入るわけではありません。穀物や豆に含まれるフィチン酸、食物繊維、カルシウムの多い食品と一緒に摂ると、吸収が下がることが知られています。玄米中心、豆中心の食事に切り替えた方が、食べている量のわりに足りなくなるのはこのためです。
逆に、動物性たんぱく質やビタミンCと一緒だと吸収されやすくなります。同じ食材でも、組み合わせで入り方が変わるということですね。
まず食事で埋めるとしたら、どこを触るか
いちばん現実的なのは、たんぱく質の中身を見直すことです。鶏むね肉やささみに偏っている方は、週に何度か赤身の牛肉に替えるだけで供給量が変わります。卵を1日1個足すのも、負担が小さいわりに効きます。
牡蠣は含有量が突出していますが、毎日食べるものではないので、あくまで機会があればという位置づけです。
サプリメントを使うなら、どういう扱いにするか
食事で足りていれば必要ありませんが、食事量そのものを落としている期間は、上限が下がっているので埋めにくくなります。私が実際に良いと感じているのは、ディアナチュラ 亜鉛+マカ(https://amzn.to/4aMovLs)のように、亜鉛が単純な形で入っていて、1日1粒で完結するタイプです。続かないと意味がない栄養素なので、粒数が少なく、味の主張がないことは実用面でかなり大事なんですよ。
ただし、これは食事の代わりではありません。亜鉛は摂りすぎると銅の吸収を妨げることが知られていて、多く摂れば効くという種類のものではないです。製品に書かれている目安量を超えないようにしてください。
ある会員のケース:味の話から食事の中身が見えた方
30代の女性で、体重は落ちているのに脚のむくみが取れないと言って来られた方がいました。食事内容を聞くと、朝はコーヒーだけ、昼はサラダとサラダチキン、夜は豆腐と野菜。たんぱく質は摂っているつもりの構成です。
話しているうちに「最近、味が薄く感じるので醤油を足している」と言われて、そこで見えました。その方には、昼のサラダチキンを週に何度か牛の赤身に替えてもらって、朝に卵を足してもらいました。1ヶ月ほどで、本人から「味付けが元に戻った」と報告がありました。むくみもそこから引いています。あくまで一例で、効果には個人差があります。
よくある質問
Q. 味を感じにくいのは、必ず亜鉛不足ですか?
いいえ。味覚の変化は、薬の影響、口の中の乾燥、鼻の症状、その他の疾患でも起こります。急に強く出た場合や、長く続く場合は自己判断せず、耳鼻咽喉科や内科を受診してください。医師の指示が優先です。
Q. どのくらいで戻りますか?
味蕾の入れ替わりが10日前後なので、不足が原因であれば数週間で感じ方が変わる方が多いです。ただし個人差があり、原因が別にあれば変わりません。
Q. 亜鉛を摂れば肌もきれいになりますか?
不足していた場合に、入れ替わりが正常に戻るという話であって、足せば美しくなるという性質のものではありません。足りない状態を埋めることと、上乗せで良くすることは別物として考えてください。
【執筆者】今村 雅史(銀座トレーニングラボ代表・パーソナルトレーナー歴20年以上)
進化学・神経科学に基づいたトレーニング指導を専門とする。NASM OPTIMA 2025・2026年度講師。


