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続く人と続かない人の差は、意志の強さではありません

続く人と続かない人の差は、意志の強さではありません

キーワード:習慣化 / 行動科学 / 銀座トレーニングラボ 専門性紹介
公開日:2026年7月6日

「私は意志が弱いので、続けられるか不安です」。

体験カウンセリングで、本当によく聞く言葉です。過去に何かを続けられなかった経験があるほど、この不安は強くなるようです。

でも、実はこれ、ほとんどの場合誤解です。

続けられないのは、意志の問題ではない

トレーニングが続くかどうかを、意志の強さで説明しようとする人は多いです。

しかし、行動科学の研究では、習慣の継続を決めるのは「意志力」ではなく「仕組み」であることが繰り返し示されています。この違いを理解しているかどうかで、トレーニングの続けやすさは大きく変わってきます。

MITのアン・グレイビール教授の研究で知られる「習慣ループ」という考え方があります。トリガー、つまりきっかけ。ルーティン、つまり行動。リワード、つまり報酬。この三つが連鎖することで、行動は習慣として脳に定着します。

意志力に頼った行動は、平均して3週間ほどで消えることが多いとされています。意志力は、有限な資源だからです。

一方で、仕組みに組み込まれた行動は、意志力を使わずに継続できます。

心理学者のロイ・バウマイスターが提唱した「自我消耗」という考え方があります。人が一日の中で発揮できる意志力には限りがあり、仕事や人間関係で使い果たした後には、トレーニングや食事管理に回せる意志力がほとんど残っていない、という状態が起こり得ます。夜になるとつい暴食してしまう、という相談の背景には、こうした仕組みが関係していることが多いです。

なぜ「一人で頑張る」ことが失敗しやすいのか

自宅で一人でトレーニングを続けようとして、挫折した経験がある人は多いはずです。

これは、その人が怠け者だからではありません。トリガーとリワードの仕組みが、そもそも用意されていないからです。誰にも見られず、誰との約束もなく、ただ「今日はやろう」という気持ちだけで動く行動は、続かなくて当たり前だと言えます。

パーソナルトレーニングが継続率で優れている理由のひとつは、予約という強制的なトリガーがあることです。「予約が入っているから行かなければ」というプレッシャーが、意志力を使わずに行動を起こさせます。

さらに、社会的コミットメントという要素があります。人に見られている、約束しているという状況は、単独での運動に比べて継続率を大きく高めることが、行動経済学の研究で示されています。

挫折を繰り返してきた会員の変化

以前、ジムでの継続に何度も失敗してきたという50代の男性会員がいました。過去に3つのジムに入会しては、いずれも数ヶ月でやめてしまったといいます。

本人は「自分は継続力がない」と繰り返し話していましたが、話を聞いていくと、過去のジムはすべて通い放題型で、予約や約束の仕組みがないものでした。行きたいときに行けばいい、という自由さが、逆にトリガーを失わせていたのです。

当ラボで週2回の固定予約を組んだところ、本人いわく「予約があることで、逆に気が楽になった」とのことでした。行くか行かないかを毎回自分で判断する必要がなくなったからです。1年以上経った今も、継続できています。

報酬の与え方にも技術がある

もうひとつ重要なのが、リワードの設計です。

「痩せる」という最終的な報酬は、数ヶ月先にしかやってきません。脳は、遠すぎる報酬にはモチベーションを維持できません。

これは、脳内のドーパミン回路の性質です。ドーパミンは「報酬を得たとき」だけでなく「報酬に近づいていると分かったとき」にも分泌されます。つまり、小さな達成を頻繁に実感できる仕組みがあると、モチベーションは維持されやすくなります。

ゲームやアプリの多くが、細かいレベルアップやポイント表示を用意しているのも、同じ原理を利用しています。フィットネスの継続支援においても、この設計思想を取り入れない手はありません。

「先週より、スクワットの重量が2.5キロ増えました」。この一言が、数ヶ月先の理想の体型よりも、実は継続に効いています。

体重や見た目の変化は、数週間単位ではほとんど動きません。しかし、重量や回数といった数値は、毎回のセッションで必ず動きます。この「毎回動く指標」を見せ続けることが、遠い目標との間を埋める役割を果たします。

銀座トレーニングラボの習慣化サポート

当ラボでは、毎回のセッションで、前回との比較データを必ず伝えます。重量、回数、姿勢の変化。数値でも感覚でも構いません。「先週との違い」を毎回言葉にすることを、意識的に行っています。

また、LINEでの日々のやり取りも、単なる報告の場ではなく、小さな達成を拾い上げる場として使っています。

「今日は間食を我慢できた」ではなく、「今日はタンパク質を先に食べられた」。何を拾って評価するかで、続けやすさは変わってきます。我慢を評価すると、我慢が前提の関係になります。できたことを評価すると、行動そのものが積み重なっていきます。

若手トレーナーへ

もし今、指導の現場に立っているなら、クライアントの継続率を「本人のやる気」のせいにしていないか、一度振り返ってみてください。

継続できないクライアントに対して、「もっと頑張ってください」と声をかけるのは簡単です。しかし、それでは何の解決にもなりません。トリガー、ルーティン、リワードのどこが欠けているのかを見極め、仕組みとして設計し直すことが、専門家としての仕事です。

知識としてこの理論を知っていても、実際のセッションで使いこなせるようになるまでには時間がかかります。私自身、駆け出しの頃はクライアントの欠席が続くと「やる気が足りないのだろう」と考えてしまっていました。今振り返ると、それは指導者側の設計不足だったと分かります。

「頑張る」を仕組みに変える

ここで伝えたいのは、意志の力に頼らない、という考え方です。

頑張ろうとするほど、意志力は消耗します。消耗すれば、続かなくなります。

続けるために必要なのは、根性ではなく設計です。いつ、どこで、誰と、何をきっかけに行動するか。この設計さえできていれば、意志の強さに関係なく、行動は積み重なっていきます。

当ラボのカウンセリングでは、トレーニングの内容と同じくらいの時間をかけて、生活の中のどこにトリガーを置けるかを一緒に考えます。仕事帰りに寄れる立地であること自体も、実はひとつの仕組みです。銀座という場所は、多くのビジネスパーソンにとって日常の動線の中にあります。わざわざ足を運ぶ必要がないという環境も、継続を支える設計の一部だと捉えています。

完璧じゃなくても、続いていれば変わる

続けられなかった過去があるとしても、それはあなたの弱さの証明ではありません。

仕組みが用意されていなかっただけです。

意志の力を試すのではなく、続く仕組みを作る。そこから、変化は始まります。次に何かを始めるときは、自分の意志の強さを疑う前に、周りにどんな仕組みを置けるかを考えてみてください。答えは、案外あなたの外側にあります。

【執筆者】今村 雅史(銀座トレーニングラボ代表・パーソナルトレーナー歴24年)
進化学・神経科学に基づいたトレーニング指導を専門とする。NASM OPTIMA 2025・2026年度講師。

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