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50代からトレーニングを始めるのは遅い?むしろ今が一番重要な時期です

50代からトレーニングを始めるのは遅い?むしろ今が一番重要な時期です

「もう50代だから筋トレしても遅い」と言う方がいます。

その逆です。50代こそ、筋力トレーニングを始める最も重要な時期です。

これは励ましの言葉ではなく、数字の話です。

サルコペニアという問題

サルコペニアという言葉を聞いたことがありますか。

加齢に伴う筋肉量と筋力の低下を指す医学用語で、2010年に国際的な診断基準が定められました。単なる「筋力の衰え」ではなく、転倒・骨折・寝たきりへの入り口となる、深刻な状態として認識されています。

筋肉量は30代から徐々に減り始め、50代以降は急加速します。何もしなければ、60代で約25〜30%、80代では約40%の筋肉量が20代と比べて失われると言われています。

筋肉が減ると何が起きるか。基礎代謝が落ちて体脂肪がつきやすくなる。転倒しやすくなって骨折リスクが上がる。歩く速度が落ちて活動量が減る。インスリン感受性が下がって糖尿病リスクが高まる。

これらすべてが、「老後の生活の質」を直接的に決める要素です。

では、50代からトレーニングを始めて効果はあるのか

あります。

これは私の個人的な見解ではなく、複数の研究が示していることです。

50〜70代を対象にした研究では、週2〜3回の抵抗トレーニングを12週間続けることで、筋肉量が平均1〜2kg増加し、筋力は20〜30%向上したというデータがあります。

重要なのは、50代でも「筋肉の合成能力」は失われていないという事実です。20代と同じ速さではないし、同じ刺激では効果が出にくい。でも、適切な刺激を与えれば、筋肉はつく。これは医学的に確認されています。

「遅い」のではなく、「適切なアプローチが必要」なだけです。

50代のトレーニングで気をつけること

50代でトレーニングを始める際に、特に注意が必要な点があります。

まず、評価なしにスタートしないこと。50代になると、どこかに慢性的な痛みや動きの制限を抱えている方が多い。膝・腰・肩。これらを無視してトレーニングを組むと、症状が悪化する。

私がやるのは、まず動きのスクリーニングです。どの動作で制限があるか、どこに痛みがあるか、どの方向の力が弱いかを確認してから、プログラムを設計します。この評価のステップを省略したトレーニングは、50代以降では特にリスクが高い。

次に、関節の保護を最優先にすること。20〜30代なら「痛みが出たら止める」で間に合いますが、50代は痛みが出る前に予防する設計が必要です。膝関節・腰椎・肩関節への負担を最小限にしながら、筋肉への刺激を最大化する動きの選択が求められます。

そして、回復時間を十分に取ること。50代以降は筋肉の回復速度が落ちます。毎日トレーニングすると回復が追いつかない。週2〜3回のトレーニングで、残りは回復に充てる。この設計が結果的に最も早く体を変えます。

タンパク質の問題

50代以降でよく見られるのが、タンパク質の摂取量が不足している問題です。

食が細くなる、食欲が落ちる、という変化が50代から始まります。結果として、筋肉合成に必要なタンパク質が慢性的に不足した状態になる。

トレーニングをしてもタンパク質が足りなければ、材料がないので筋肉はつくられません。

日本人の50代以上の平均タンパク質摂取量は1日あたり体重1kgに対して約0.8〜1gとされていますが、筋肉の合成を促進するには1.2〜1.6gが推奨されています。体重60kgなら72〜96g。これを毎日摂るとなると、意識しないと難しい量です。

食事でタンパク質を摂ることを基本としながら、必要に応じてプロテインサプリメントを補助的に使うことは有効な手段です。

骨密度とトレーニング

50代以降、特に女性は骨密度の低下が問題になります。閉経後のエストロゲン低下は骨からカルシウムが溶け出すスピードを速め、骨粗しょう症のリスクを高めます。

ここで重要なのが、抵抗トレーニングが骨密度の維持・向上に効果があるという事実です。骨は筋肉と同様、適切な負荷をかけることで強くなる。ウェイトトレーニングやジャンプ動作のような「骨に圧縮力をかける運動」は、骨密度の低下を抑制することが確認されています。

水泳や自転車のような浮力や台に乗っての運動は心肺機能には良いですが、骨への直接的な圧縮力が少ないため、骨密度改善への効果は限定的です。骨を守るためにも、体重を支える動作のトレーニングが必要です。

「老後」のためではなく「今日から10年」のために

50代でトレーニングを始めることの意味を、「老後のために」と捉える方もいますが、私は少し違う言い方をします。

「今日から10年、どう過ごすか」のためです。

60代で旅行に行くとき、山に登るとき、孫と遊ぶとき、体が動くかどうかは、50代の今の行動で決まります。

50代からトレーニングを始めた方が、1年後に「こんなに体が変わると思わなかった」と言う場面を私は何度も見てきました。筋力の数字が上がるのはもちろん、「疲れにくくなった」「よく眠れるようになった」「気分が明るくなった」という変化のほうが、本人にとっては驚きが大きいようです。

遅くはありません。むしろ、今です。

【執筆者紹介】

今村 雅史(Masafumi Imamura)

銀座トレーニングラボ代表。「一生モノの美脚」を提案するパーソナルトレーナー歴24年の動作改善スペシャリスト。

延べ数千名の指導実績を持ち、プロ選手やJリーガーなどトップアスリートのパフォーマンス向上を支援。

現在は中学校女子バスケットボール部のコーチを務めるほか、国際的なトレーナー教育機関「NASM OPTIMA」にて2025年、2026年と2年連続で講師として登壇しています。

進化学・神経科学に基づいた専門知識と豊富な現場経験から、あなたの身体の「なぜ?」を根本から解決します。


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