なぜ、頑張っても痩せない人がいるのか?
「食事も気をつけているし、トレーニングも真面目に頑張っています。でも、ここ最近、体重の減りがすごく遅くなった気がして…」。
食事(マクロ栄養素:タンパク質、脂質、炭水化物)と運動。この2大要素をしっかり管理しているにも関わらず、なぜかダイエットが停滞してしまう。
この「停滞期の壁」にぶつかった時、私たちプロが次に注目するのが、「ミクロ栄養素」、特に「ビタミンB群」です。
ビタミンB群こそが、ダイエットの成否を分ける、縁の下の超重要プレーヤーなのです。
科学的解説①:あなたの身体は”代謝”という化学工場
私たちの身体を、一つの巨大な化学工場だと想像してみてください。食事から摂った栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質)は「原材料」。
そして、活動するためのエネルギーが「製品」です。
この工場で、原材料を製品に変える生産ラインが「代謝」です。
そして、この生産ラインを動かす無数の機械が「酵素」。
しかし、この酵素という機械は、単体ではうまく作動しません。機械をスムーズに動かすための「潤滑油」の役割を果たすのが、「補酵素」と呼ばれるビタミンB群なのです 。
いくら良質な原材料(バランスの取れた食事)を工場に入れても、潤滑油であるビタミンB群が不足していると、代謝のあちこちでボトルネックが発生し、エネルギーを効率的に作り出すことができません。
そして、製品になれなかった原材料は、「在庫(=体脂肪)」として工場内にどんどん溜まっていく…。
これが、「頑張っているのに痩せない」という停滞期の正体の一つです。
科学的解説②:脂肪燃焼を加速させる「ビタミンBブラザーズ」の働き
ビタミンB群は8種類からなるチームで、それぞれが異なる役割を持ちながら、互いに協力し合ってエネルギー代謝を動かしています。
ビタミン (Vitamin) | 主な働き (Main Function) | 多く含まれる食材 (Foods Rich In It) |
ビタミンB1 | 糖質の代謝に不可欠。ご飯やパンをエネルギーに変える最初のステップで活躍 。 | 豚肉、うなぎ、玄米、大豆製品 |
ビタミンB2 | 脂質の代謝のエース。摂取した脂肪を燃焼させ、エネルギーに変える際に必須 。 | レバー、うなぎ、卵、納豆、乳製品 |
ビタミンB6 | タンパク質の代謝をサポート。筋肉の合成や分解に関わり、強い身体作りを助ける 。 | マグロ、カツオ、鶏肉、バナナ、にんにく |
ビタミンB12 | 脂質やタンパク質の代謝を助ける。赤血球の生成にも関わり、全身への酸素供給をサポート 。 | しじみ、あさりなどの貝類、レバー |
ナイアシン (B3) | 糖質・脂質・タンパク質、三大栄養素すべての代謝に関わる万能選手 。 | 鶏胸肉、カツオ、たらこ、きのこ類 |
パントテン酸 (B5) | 糖質と脂質の代謝に関与。ストレス対抗ホルモンの合成にも関わる 。 | レバー、納豆、鶏肉、きのこ類 |
解決策:ビタミンB群を賢く摂取する3つのルール
では、どうすればこの重要なビタミンB群を効率的に摂取できるのでしょうか?
ルール1: 「単品食べ」をやめ、「組み合わせ食べ」を意識する
ビタミンB群はチームで働くため、多様な食材を組み合わせることが、バランス良く摂取するコツです。
例えば、豚の生姜焼き(豚肉のB1+玉ねぎのアリシンで吸収率UP)や、レバニラ炒め(レバーの豊富なビタミンB群+ニラのアリシン)は、非常に合理的な組み合わせです。
ルール2: 「精製された炭水化物」を避け、「未精製の炭水化物」を選ぶ
ビタミンB群は、米や小麦の「胚芽」に多く含まれています。
白米や白いパンのように精製された炭水化物は、この最も栄養価の高い部分が取り除かれています。
主食を、ビタミンB群が豊富な玄米、全粒粉パン、オートミールなどに切り替えることは、ダイエットを加速させる上で非常に効果的です 。
ルール3: 水溶性ビタミンの特性を理解する
ビタミンB群は「水溶性ビタミン」であり、水に溶けやすく、熱に弱い特性があります。
また、体内に蓄積できないため、一度に大量に摂るよりも、毎回の食事でこまめに補給することが理想的です。
まとめ:あなたのダイエットを、もう一段階上のレベルへ
もし、あなたがダイエットの停滞を感じているなら、それは、身体という化学工場の「潤滑油」が足りていないだけなのかもしれません。
タンパク質、脂質、炭水化物という「マクロの視点」に加えて、ビタミンB群という「ミクロの視点」を持つこと。
それが、停滞期を打ち破り、あなたのダイエットを成功へと導く、最後のワンピースになる可能性があります。